希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるようにという観点から育児・介護休業法が改正されました。その概要は次のとおりです。
(1)男性の育児休業取得促進のための子の出生直後の時期における柔軟な育児休業の枠組みの創設
子の出生後8週間以内に4週間まで取得することができる柔軟な育児休業の枠組みが創設されます。
①休業の申出期限については、原則休業の2週間前まで(現行:1か月前まで)
②分割取得できる回数は2回まで
③労使協定を締結している場合に、労働者と事業主の個別合意により、事前に調整したうえで休業中の就業を可能に
(2)育児休業を取得しやすい雇用環境整備および妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務づけ
次の措置を講ずることが事業主に義務づけられます。
①育児休業の申出・取得を円滑にするための雇用環境の整備に関する措置
②妊娠・出産(本人または配偶者)の申出をした労働者に対して事業主から個別の制度周知および休業の取得意向の確認のための措置
(3)育児休業の分割取得
育児休業((1)の休業を除く)について、分割して2回まで取得させることが可能となります。
(4)育児休業の取得状況の公表の義務づけ
常時雇用する労働者数が1,000人超の事業主に対して、育児休業の取得状況の公表が義務づけられます。
(5)有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
有期雇用労働者の育児・介護休業の取得要件のうち「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上である者」という要件が廃止されます。
ただし、労使協定を締結した場合には、無期雇用労働者と同様に、事業主に引き続き雇用された期間が1年未満である労働者を対象から除外することは可能とされます。
雇用環境整備と個別の周知・意向確認措置の義務づけおよび有期雇用労働者の取得要件緩和は令和4年4月1日に、大企業の取得状況の公表義務づけは令和5年4月1日に、その他の改正は政令で定める日に施行されます。
この改正をふまえ、雇用保険法も所要の規定が整備されます。
その他の新法令・通達
登記に関する手続きの簡略化
一定の動産譲渡登記・債権譲渡登記に関する手続きについて、登記事項証明書の添付の省略が可能となります。
(令和3・6・1法務省令第32号=動産・債権譲渡登記規則の一部を改正する省令)
著作物利用のネット対応
図書館等が著作物等の公衆送信を行なえるようにするための権利制限規定の見直し、放送番組のインターネット同時配信等に関する権利処理の円滑化が行なわれました。
(令和3・6・2法律第52号=著作権法の一部を改正する法律)
障害者への合理的配慮が義務化
障害者差別解消法が改正され、事業者についてはこれまで努力義務だった障害のある人への「合理的配慮」の提供が義務化されることになりました。
(令和3・6・4法律第56号=障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律)
健康保険等の見直し
一定以上の所得のある後期高齢者の医療費の自己負担率を2割に引上げ、任意継続被保険者の保険料の算定基礎の見直しなど「全世代対応型の社会保障制度」構築に向けた法整備が行なわれました。
(令和3・6・11法律第66号=全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律)
産業競争力強化のための取組み
バーチャルオンリー株主総会の開催を可能とする特例の創設など、わが国の産業の持続的な発展を図ることを目的とした様々な措置が講じられました。
(令和3・6・16法律第70号=産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律)