会社を巡る社会経済情勢の変化に鑑み、株主総会の運営や、取締役の職務の執行の一層の適正化等を図るため、今般、会社の基本的な仕組みを定める「会社法」の一部が改正されました。
主な改正内容は、次のとおりです。
株主総会資料のオンライン提供制度の創設
現行法上は、株主総会資料をインターネット等を用いて株主に提供するためには、株主の個別の承諾が必要とされています。
今回の改正により、株主総会資料をウェブサイトに掲載し、株主に対してそのアドレス等を書面で通知する方法により、株主総会資料を株主に提供することができる制度が新たに設けられました。
なお、従来どおり書面での資料提供を希望する株主は、書面の交付を請求することができます。
上場会社等に社外取締役の設置を義務付け
現行法上では、上場会社等が社外取締役を置かない場合は、株主総会でその理由を説明しなければならないとされていました。
今回の改正により、上場会社等は社外取締役を設置することが義務付けられました。
株主提案が1人10件までに
近年、1人の株主が膨大な数の議案を提案するなど、株主提案権の濫用が問題となっていました。
今回の改正により、株主が提案できる議案数を10までとする上限が設けられました。
取締役の報酬に一定の規律
これまで取締役の報酬は、取締役会か代表取締役が決定していることが一般的でした。
今回の改正では、その手続きの透明化を目的に、上場会社等において、取締役の報酬の内容が株主総会で決定されない場合には、取締役会は、その決定方針を定め、その概要等を開示しなければならないこととされるなど、一定の規律が設けられました。
役員の賠償金を会社が肩代わり可能に
役員が株主代表訴訟などで訴えられたときに、会社が弁護士費用や賠償金を補償すること(会社補償)について、現行法上では直接に定めた規律はありませんでした。
今回の改正により、株式会社が会社補償をするために必要な手続規定や会社補償することができる費用等の範囲に関する規定が新たに設けられました。
施行日は、一部を除いて、公布の日から1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日です。
その他の新法令・通達
住宅地の空き家をオフィスなどに使えるよう規制緩和
高齢化が進む住宅団地を活性化させ、幅広い世代が安心して住める「多世代共生型のまち」へ転換させることを目指して、住居専用の地域内で、店舗やオフィス、高齢者施設などを建てやすくするよう、団地再生の事業計画を作成すれば行政手続きが簡素化されるようにするなどの規制緩和が行なわれました。
(令和元年・12・6法律第66号=地域再生法の一部を改正する法律)
経営効率化へ企業のデジタル技術活用を促進
リアルタイムに情報やデータが活用・共有されるデジタル社会(=Society5.0社会)に対応するため、企業経営における戦略的なシステムの利用のあり方を提示した指針を国が策定し、その指針をふまえて、優良な取組みを行なう事業者を認定する制度が創設されました。
(令和元年・12・6法律第67号=情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律)
日米貿易協定が1月1日発効
日米間で、一定の農産品と工業品の関税を撤廃・削減する「日米貿易協定」と、ソフトウエア・音楽・電子書籍等のデジタル製品の送信に関税を課さないこととする「日米デジタル貿易協定」が、令和2年1月1日に発効されました。
(令和元年・12・13条約第10号=日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定、条約第11号=デジタル貿易に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定)