近年、デジタル革命により、業種の垣根が崩れ、技術革新を牽引する中小・スタートアップ企業が増えているとともに、ブランディングによる企業競争力の源泉として、デザインの重要性が高まっています。
そこで、そうした技術(特許)やデザイン(意匠)等の保護を強化することを目的として、令和元年5月17日に「特許法等の一部を改正する法律」(令和元年法律第3号)が公布されました。
今般、「特許法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が公布され、その施行日が令和2年4月1日に定められました。
同改正法による主な改正内容は、次のとおりです。
特許法の一部改正
①査証制度の創設
特許権の侵害の可能性がある場合に、中立な技術専門家が、被疑侵害者の工場等に立ち入り、特許権の侵害立証に必要な調査を行ない、裁判所に報告書を提出する査証制度が創設されます。
②損害賠償額算定方法の見直し
特許侵害者が得た利益のうち、特許権者の生産・販売能力等を超えるとして、これまで賠償が否定されていた部分について、侵害者にライセンスしたとみなされ、ライセンス料相当額の損害賠償を請求できるようになります。
ライセンス料相当額による損害賠償額の算定に当たり、特許権侵害があったことを前提として交渉した場合に決まるであろう額を考慮できる(特許権の侵害なく事前にライセンス交渉をした場合と比べて増額するなど)旨が明記されます。
意匠法の一部改正
①保護対象の拡充
物品に記録・表示されていない画像や、建築物の外観・内装のデザインが、意匠法の保護対象とされます。
②関連意匠制度の見直し
長期にわたり一貫したコンセプトに基づき開発されたデザインを保護対象とするため、自己の出願した意匠や自己の登録意匠(本意匠)に類似する意匠の登録が認められる「関連意匠制度」の出願可能期間が、「本意匠の出願日から10年以内」(これまでは8か月程度)に大幅に延長されます。
また、「関連意匠にのみ類似する意匠」であっても登録が可能になります。
③意匠権の存続期間の変更
意匠権の存続期間が、「登録日から20年」から「出願日から25年」に変更されます。
④意匠登録出願手続きの簡素化
複数の意匠の一括出願が認められるようになります。
その他の新法令・通達
台風19号等による災害を激甚災害に
令和元年10月11日から同月26日までの間の暴風雨および豪雨による災害(台風19〜21号の暴風雨による災害)が、被災者等に特別な助成や財政援助が行なわれる「激甚災害」に指定されました。
(令和元年・11・1政令第142号=令和元年十月十一日から同月二十六日までの間の暴風雨及び豪雨による災害についての激甚災害並びにこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令 ほか)
次世代法の「行動計画策定指針」を改正
次世代育成支援対策推進法に基づき、事業主が策定する「一般事業主行動計画」の指針となる「行動計画策定指針」が改正されました。
改正された指針には「原則として年初において年次有給休暇等の計画表を作成すること」など、働き方改革に関連する労働条件の整備に関する記載などが追加され、令和2年度から令和6年度まで適用されることとなります。
(令和元年・11・14告示=行動計画策定指針の一部を改正する告示)
農林水産物・食品の輸出拡大に向けた体制整備
農林水産物および食品の輸出拡大に向けて、農林水産省に「農林水産物・食品輸出本部」を設置し、輸出のための取組みを行なう事業者に対する支援措置を講じることなどが定められました。
(令和元年・11・27法律第57号=農林水産物及び食品の輸出の促進に関する法律)