70歳未満の働く高齢者が厚生年金保険の被保険者であり、かつ老齢厚生年金を受給しているとき、その老齢厚生年金の基本月額と給与の額に応じて年金額が一部支給停止となる場合があります。
この減額された年金のことを、在職老齢年金と言います。
(1)在職老齢年金の計算方法
調整後の1月当たりの年金支給額の算出方法は、以下のとおりとなります(基本月額とは厚生年金の額を12で割った額、総報酬月額相当額とは、その月の標準報酬月額+その月以前1年間の標準賞与額を足して12で割った額)。
●基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円以下の場合→全額支給
●基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合→基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2
この算式で使われる「47万円」は支給停止の基準となる額で、賃金や物価の変動に応じて毎年、1万円単位で見直されます。
なお、60〜64歳までの働く被保険者についても厚生年金が一部減額支給となる場合がありますが、こちらは基準額が28万円となっていて、より複雑な計算式が使われます。
(2)現在議論されている論点
在職老齢年金は、年金額と賃金の合計が47万円や28万円といった基準額を超えると年金が減額されます。つまり、給与が多いほど年金額が減額されるしくみであることから、高齢者の労働意欲を阻害する要因であると指摘されていました。
政府は、働きたい高齢者に対し70歳までの雇用確保を企業に求める方針を示しています。そこで厚生労働省では、基準額の見直しを進めています。
ただし、年金の減額対象者が減ることは、年金の支給額が増えることにつながるため、年金財政にとっては痛手となります。
現状では、基準額について62万円、50万円台、あるいは在職老齢年金制度の完全撤廃といった案が浮上していますが、高齢者の労働意欲を促す観点と年金財政の維持との観点の綱引き状態となっています。
(3)法改正へのスケジュール
厚生労働省としては、ことし中に制度見直しについての結論を得て、来年の通常国会で改正厚生年金保険法案の提出を目指します。