2017年に民法が改正されて消滅時効の期間が見直されたことに伴い、労働基準法でも消滅時効についての検討が始まりました。
民法の消滅時効の改正
改正前の民法は、原則として債権の消滅時効は10年とされ、例外として、商事債権は5年、時給・日給制の賃金債権は1年などいくつかの短期消滅時効が設けられていました。
それが今回の改正により、権利を行使できることを知っている場合、5年に統一されました。
労働基準法上の消滅時効
一方、労働基準法上の消滅時効は、賃金債権が2年、退職金が5年、年次有給休暇請求権は2年と規定されています。
労働基準法は民法の特別法とされていますので、労働基準法の規定が優先して適用されます。このため、民法が改正されても影響はありませんが、賃金債権等の消滅時効についても5年に統一するべきとの声が挙がっています。
検討会での論点
厚生労働省の「賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会」では、以下のような論点を議論する予定です。
・賃金等請求権の消滅時効期間のあり方
・年次有給休暇請求権の消滅時効期間のあり方
・書類の保存期間、付加金等の規定のあり方
延長された場合の影響
たとえば、残業代の未払いがあっても、現在では2年までしかさかのぼって請求されませんが、これが5年になれば、企業の経済的リスクの増大につながることから、残業代未払いへの抑止力になると考えられます。
また、年次有給休暇についても、現在では40日(20日×2年)が最大であるところ、100日(20日×5年)にまで拡大されると、有給休暇の消化促進が加速すると予想されます。
検討会では、賃金不払残業の総額、年次有給休暇の取得率や取り残す理由などを勘案しながら審議を進めるとしています。
ことしの夏をめどに意見をとりまとめ、改正が必要となれば2019年にも改正案を提出したい考えです。