金融庁の金融財政審議会ではこのほど、会計監査に対する信頼性向上についての議論を始めました。
東芝の会計不祥事など会計監査の質が問われる事象が相次いでいることから、制度的な見直しが検討される予定です。
今回、見直しの対象となっているのは、次の2点です。
(1)会計監査に関する情報の株主等への提供の充実
現在の監査報告書は、財務諸表が「適正」あるいは「不適正」などの表明以外の見解の記載は限定的となっています。
しかし、たとえばイギリスでは、会計監査の透明性を高めるため、財務諸表の適正性についての表明に加え、監査人が着目した虚偽表示リスクなどを監査報告書に記載する制度が導入されています。
また、EUも同様の制度を導入する予定であり、アメリカでも、導入に向けた検討が進められています。
このような「監査報告書の透明化」について、株主等に対する情報提供を充実させる観点から、日本でも検討を進めるべき、としています。
(2)監査法人のローテーション制度の導入
監査法人のローテーション制度とは、企業が監査契約を締結する監査法人を一定期間ごとに交代させることを義務付ける制度です。
すでに監査法人内部で、企業の担当者を一定期間ごとに交代させることが義務付けられていますが、東芝のケースでは同一の監査法人との契約が約47年間継続され、この制度が有効に機能しなかったことから、さらに厳格化した制度を検討するべき、としています。
近年、イギリス、フランス、ドイツなどでは会社法等の改正により監査法人のローテーション制度が導入されており、導入後も大きな混乱は見られないことから、日本でも同様の法制化が求められています。
ただし、監査法人の交代により監査人の知識・経験の中断が生じ得ることや、日本では大手監査法人の数が限られ、現実的に交代が困難になるおそれがあること等の議論もあり、紆余曲折が予想されます。