特許庁は、企業の知財紛争を早期に解決するため、新たなADR(裁判外紛争解決手続き)制度を整備する方針です。
特許の件数が急増
IT技術の普及に伴って、1製品当りの特許件数が急増しています。たとえば、一般のプリンタでは約3000件、高級デジタルカメラに関しては1万件以上の特許が使用されているといわれています。
関連する特許を有する権利者も多様化し、以下のような弊害も危惧されています。
・ライセンス交渉に要する手間と労力が増大
・他社の権利を知らないうちに侵害してしまう可能性が増大
・知財紛争の可能性が増大
パテント・トロールへの対策
米国では最近、第三者から特許を買い集め、自らはその特許を使用せず、使用者から訴訟提起を示唆しつつ法外なライセンス料の支払いを求める悪質な「パテント・トロール」が社会問題化しています。
特に、情報通信関連の標準必須特許(標準規格に含まれる特許)の数が急増しており、標準必須特許を取得したパテント・トロールに攻撃されるリスクは日本企業でも高まっています。
知財紛争の迅速・簡便な解決が求められる
そこで特許庁では、ライセンス交渉や紛争処理のコストを小さくするための対応策が必要としています。具体的には、行政が紛争当事者の間に入って適切なライセンス料を決めるADR制度(標準必須特許裁定)の導入を検討しています。
また、中小企業では、経営資源の制約から、知財侵害に対抗して訴訟を提起することがむずかしく、訴訟提起を躊躇する傾向があります。
そこで、紛争当事者間でライセンスに関する協議が整わない場合や権利侵害をめぐる紛争が起きた場合等に調整を行なうADR制度(あっせん)について、既存の制度との関係を整理のうえ検討します。
新たな制度については専門の委員会を設置して具体的な議論を進め、今年度中に結論を出す方針です。2018年度中には特許法の改正を目指すとしています。