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50歳からのキャリアプランニング 第10回(最終回)

もう50歳? まだ50歳? 悩める50代のためのライフプランニング

[ 渡辺 葉子<わたなべ・ようこ>(特定社会保険労務士)]

いよいよ「定年」が現実のものとして意識され始める50歳。残りの会社員生活と同じかそれ以上に長い「定年後」の人生を自分はどのように生きたいのか。50歳の今こそ、将来に向けたキャリアプランニングが大切です。

50歳からのキャリアプランニング 第10回(最終回)もう50歳? まだ50歳? 悩める50代のためのライフプランニング

人生100歳時代の「50代」を考える

 50代って若いのでしょうか? それともシニアなのでしょうか?

 筆者が学生だった1970年代、企業の定年は55歳(!)でした。50代は現役生活とリタイア生活の両方を味わう世代だったのです。なんと女性ならば55歳から老齢の年金をもらえました。
 その後、企業の定年年齢は60歳となり、いまや「65歳まで」雇用確保の時代です。

 学校を卒業し、社会に放り出される年齢はほとんど変わっていないのに、嫌が応でも人生の荒波に揉まれる期間はどんどん延びています。会社人生の山を越え、谷を越えて、人の世の酸いも甘いも知りつくしたはずの50代になっても、なかなか「卒業」にたどり着くことができません。
 それどころか、いまでは日本の人口の1,800人に1人が100歳以上なのだとか(2016年9月時点。厚生労働省発表)。そんな人生の大先輩たちからみたら、50代などまだまだ青い、若輩者です。

 これって心底喜ばしいこと? それとも…?

 どちらにしても、社会人になって30年以上ともなれば、「人生は楽しいことばかりじゃない」ということも身にしみてわかっています。
 そう考えると、「これからの人生、楽しみ半分、懸念も半分」というのが、大方の人の率直な気持ちでしょう。

 ところで、高齢者というのは何歳以上の人のことだと思われますか?

 例えば「老齢の年金」は65歳から、雇用保険の「高年齢被保険者」は65歳から、介護保険もその事由を問わず「介護保険サービスの対象」となるのは65歳からです。
 ならば65歳からでしょうか…。

 でも、そういえば、2017年1月5日に、日本老年学会と日本老年医学会は、現在「65歳以上」とされている高齢者の定義を、「75歳以上」に引き上げるべきとの提言を行いました。心身の健康に関する複数の調査結果を基に、生物学的にみた年齢は、10年から20年前に比べて、5歳から10歳若返っていると判断されるからだそうです。

 つまり、「65歳なんてまだまだ元気! 皆さん、もっともっと働けるよっ!」というメッセージとも捉えられます。これには「年金の支給開始年齢を引き上げる理由づけにされるのではないか?」などの憶測も呼んで、ちょっとした話題になりました。

リタイアメントライフをデザインするコツ

 あらためて、50代とは?
 間違いなくいえるのは、いまが人生の後半への入り口だということです。

 本連載の第2回で、「アラフィフ・クライシス」の話をしましたね(夫婦世帯、おひとり様…それぞれの視点から“アラフィフ・クライシス”に備える)。50代は人生の前半から後半への橋渡しの時期です。若い頃とは違うたくさんの心配事が出てくる年代ゆえに、アラフィフ・クライシスとも呼ばれています。

 そこで、50代は「いろいろなことを考えるべき世代」ともいわれます。すなわち、リタイアメントライフデザインです。

■リタイアメントライフデザインの例

 おそらく、考えるべき課題はすぐにわかると思います。あとは対策を立てるだけ。ですが、ここで多くの人がつまずいてしまいます。なぜでしょう?

 もはやコワいものなしの若者のように楽観的にはなれません。日本の財政事情が火の車だということも知っています。年金・医療・介護のどれをとっても不安なことばかり…。危惧する事案ばかりが頭に浮かんでくると、多くの人は思うのです。
 「先行き不透明な世の中だし、まっ、明日があるさ。今日はやめて明日考えよう!」と…。
 で、気がつけば10年が過ぎ、あっという間に還暦です。定年後人生の始まりはすぐ目の前。そして、そのときになって必ず思うはずです。

「あ~あ、10年前にちゃんと考えて、少しでも手を打っておけばよかった。もう間にあわないんじゃないか?!」

 10年後に後悔しないために、50代のいまこそ、じっくりと定年後の生活設計について考えましょう。

①問題の解決にこだわらず、リスクを回避(低減)することを考える

 すべての問題に答えを出す必要はありません。明確な解決策がなくてもよいのです。時間そのものが解決してくれることもあれば、誰の力によるでもなく自然に解決することだってあります。もちろん、いまは考えも及ばないような悩みが出てくる可能性も否めません。
 結局、先のことは誰にもわからない…。それが人生というものでしょう。

 それでも、いま想定されるリスクを回避(低減)しておくことに意味があるのです。常に、問題意識を持つことが大事なのです。
 課題に対してプランを立て、実行してみて、必要に応じてプランを立て直す。PDCAサイクルが活かせるのは仕事だけじゃありません(「PDCAサイクル」と「社会人基礎力」でオリジナルキャリアを描こう)。

 将来の不安から目を背けるより、PDCAサイクルを使って積極的にチャレンジする人生を歩むほうが、ずっと素敵だと思いませんか?
 誕生日やお正月、年度始めなどはいいチャンスです。ぜひ、定期的にライフデザインのCheck&Actを実行してください。

②文字に書き出して、問題を整理する

 考えるときには、必ず、文字にして書き留めます。頭のなかだけで考えていると、なかなか物事が整理できず、思考が堂々巡りしてしまいがちだからです。

 たとえば、不安に思う事例を書き出していくうちに、ひとつの解決策で、それらがすべて解消(低減)するのに気づくことがあります。たったひとつの問題が、100の不安事例の素になっていることだってあるのです。

■セカンドライフに向けて不安を解消(低減)する

50代から始めるライフプランニング

 50代は本当に忙しく、悩むことの多い年代です。でも、60歳、70歳になってからふりかえってみると、やはり50代というのはまだまだ若い。可能性がいっぱいある年代ではないでしょうか。

 50代も半ばになると、「あ~、疲れた。もう歳かな?」と思うことが出てきます。でも、その根底には、「まだまだやれるはずなのに。あ〜、情けない」と思う気持ちがあるはずです。
 それが60代になると、まるで違ってきます!「疲れたなぁ。まっ、仕方ない。だってもう60代だもん」…というように。

 体力の衰えを感じつつも、あきらめるにはまだ早い。それが50代です。

 何かとビミョ~な、この50代という年頃をいかに過ごすか。どんな人生をプランニングするか。
 
 ここから先は、そう…この記事を最後までお読みいただいた皆さん! 皆さん次第です。

▼連載「50歳からのキャリアプランニング」
著者 : 渡辺 葉子<わたなべ・ようこ>(特定社会保険労務士) 社会保険労務士法人YWOO 代表。日本年金学会正会員。損害保険業界に5年間、派遣業界に15年間勤務の後、2006年起業独立。企業の人事コンサルティング、営業支援コンサルティング、バックオフィスアウトソース受託業、執筆、出版社・公的機関等にて社会人・実務者セミナー講師、企業内研修(人材育成)企画・講師を務める。
http://www.ywoo.co.jp/
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