ご存知ですか? 起業する3人に1人は60歳以上です
『中小企業白書』(2014年版)によれば、2012年の調査で、過去1年間に起業した方は22万3,000人、そのうち32.4%をなんと60歳台が占め、全年代別でトップになっています。
なぜ、こんなにも起業するシニアが多いのでしょうか?
平均寿命は長くなり、日本は世界トップレベルの長寿国になりました。定年した後にだって、長い長~い人生が待っています。
老齢年金があるのはもちろん助かりますが、それだけでは思うように暮らせない。まだまだ元気だから、旅行もしたいし、どんどん外にも出ていきたい…。「きょういく(今日行くところがある)」「きょうよう(今日用事がある)」ですね。
なので、もうちょっと収入があるに越したことはありません。
それに、誰だって、長生きだけが目的ではないはず。
できるだけ長く“健康”でいたい!
これが万人の願いです。そこで健康寿命を延ばすためにも、世間と接し、程よく緊張感があった生活がしたい。
それに、今までの長い仕事人生で培った経験や人脈、豊富な知識や情報、これらを定年と同時に捨ててしまうには惜しすぎます。
そこで、起業というわけです。
「無理をしない」「生活費や老後の蓄えに手をつけない」
「起業するからには、どんどん稼ごう!」と意気揚々と始める起業ももちろんよいのですが、そこはすでに人生の甘いも酸いも熟知している“はず”のシニアです。
身の丈を考え、「無茶は禁物!」と心得てください。
なによりも若い世代とは違って、再チャレンジするのはなかなか難しい。日常の生活費や老後のための貯金には、決して手をつけてはなりません。
起業に費やすことができる資金の枠を決めておき、それを厳守するべきです。
ただし一方で、“やるからには全力投球!”というヤル気は必要。
できるだけ多く稼げるように、業績を維持できるように工夫する。
これはシニアに限らず、起業する際の必須事項です。
実は、筆者は50歳で起業した経験者です。
起業のきっかけは、21歳の時。留学先のスペインで夜空の星を眺めながら、自らの人生ロードが頭のなかで形になりました。25歳で結婚することから、50歳で起業するまでの道筋が出来上がった、奇跡のような一夜です。
思い起こせば、すべてがあの時の計画通り。なんてことでしょう!(まぁ、これは結果論です。それに、これからは何が起こるかわかりません)
ちょっとばかり起業の先輩として述べさせていただくとすると、起業時から守り続けてきたことが一つあります。
それは、“一瞬たりとも赤字を出さない”こと。
筆者の仕事は物の売り買いではないので、買掛金や売掛金、在庫などはありません。すべて、経験と知識、ノウハウで乗り切る仕事です。実はこれこそ、シニア起業に最適な仕事だと思うのですが、いかがでしょう?
それでも起業すれば、電気代も文具代も、交通費もかかります。自宅ではなく事務所を設けるようになれば家賃がかかり、人を雇うようになればその責任はより大きくなります。
会社員だった時は、会社が守ってくれた部分もありましたが、起業したら一匹狼。誰も助けてはくれません。すべての責任は自分に降りかかってくるのです。
でも、悪いことばかりでもありません。仕事がうまくいったときの嬉しさや幸福感は、何とも言えない至極の瞬間です。
「働き方改革」はシニア起業の背中を押す?
さて、いま50代半ばの読者の皆さん。将来、起業することを考えたことがありますか?
起業の第一歩は、「起業しようかな?」という、その感情です。
起業までは次の4つのステップがあるとされています。
■起業までの4つのステージ
『中小企業白書』(2014年版)によれば、シニア(ここでは55歳超をシニアといいます)の特徴は、潜在希望者に占める起業家の割合が46.2%に上ること。35歳以下では、13.4%ですから、かなり本気度が高いといえます。
もちろん、年金受給や生活ステージが現役世代に比べて起業しやすい状況にあることも大きな要因ではあります。
ところで、政府が注力している「働き方改革」。そのひとつとして、兼業(副業)推進があります。
日本のほとんどの企業は兼業(副業)を制限していて、容認している企業は少なく、中小企業庁の調査(2014年)ではわずか3.8%に留まります。しかしながら、昨今はIT業界等において兼業(副業)を認める企業もどんどん登場しています。
安倍首相は、1人の人の可能性や知恵を1社のみならず、より広い社会のために活かそうという考えを打ち出しています。
ちなみにアメリカでは、起業率も高く、また、ライドシェアや民泊などで副収入を得る多様な働き方が進んでいます。もちろん、いろいろな問題点も指摘されていますが、それでも選択肢が多いことはよいことです。
シニア起業家については、資金調達や創業融資を優遇する制度や雇用調整助成金等もあります。しっかりした事業計画を練り、返済できる範囲での融資ならば調べてみる価値はあります。
そうそう、思い出しました。
かつて、資格取得学校で講師をしていたとき、定年前の方が多く在籍するクラスがありました。そのなかの1人に資格を取る理由を尋ねると、その方は満面の笑みを浮かべ、こうおっしゃいました。
「一生に1回でいい。“社長!”と呼ばれたいんですよっ!」
それも、ロマンです。
- ▼連載「50歳からのキャリアプランニング」
-
- 第10回 もう50歳? まだ50歳? 悩める50代のためのライフプランニング
- 第9回 会社人生で培った知識&ノウハウ&人脈をシニア起業で花開かせたい
- 第8回 「PDCAサイクル」と「社会人基礎力」でオリジナルキャリアを描こう
- 第7回 「働きたいだけ働く」その先に待つ自由な時間に、あなたは何をしますか?
- 第6回 セカンドライフに必要な「保障」は何か?じっくり考えて保険を見直そう
- 第5回 「不純な動機」と「変化を楽しむ」気持ちが定年後の「やる気」に火をつける!?
- 第4回 キャッシュフロー表と家計バランスシートで定年後生活を「見える化」しよう
- 第3回 定年後の「ライフプラン=夢」と「お金」について考えよう
- 第2回 夫婦世帯、おひとり様…それぞれの視点から“アラフィフ・クライシス”に備える
- 第1回 定年後を見据え、いま考えておきたい「仕事・お金・生活…」