情報を共有するだけじゃ、強いチームは作れない
組織の力を最大限に発揮することで、好業績をあげる企業の最たる例が、沖縄の総合スーパー、サンエ―だ。
2016年2月期の同社の決算は、年商1,738億円、経常利益144億円というものだった。経常利益率3%をあげれば優良といわれる業界で8%を優に超える利益を出しているのだから、素晴らしいというほかはない。
同社のチームプレーを象徴するのが、毎朝8時から9時まで開催される早朝ミーティングだ。
本来は9時始業で、この会は自主参加が原則だが、会長、社長以下の本社勤務の幹部社員はほぼ全員が沖縄にいる限り参加する。仕入れ担当、営業担当、財務担当、総務担当、物流センター担当等々、異分野の担当者が一堂に会しての毎日の会議と考えればいい。
最初は、出張者の報告から始まる。会長、社長も出張から帰ってきたときには、この「早朝ミーティング」で報告する。
発言を希望する者は、ホワイトボードにその主旨を順次書き込んでいくのだが、それらがその日の議題となる。幹部社員ばかりでなく、若い社員をも含め、毎回50名から70名程度が参加するという。
「早朝ミーティング」に参加すれば、自分の担当以外の分野で何がおこなわれ、何が問題になっているかが、じつによくわかる。まさに「早朝ミーティング」が、同社の「情報共有」の場として機能しているのだが、共有しているのは情報だけではない。
その情報に基づいて、どんな議論がなされたうえで判断がくだされたのか、何を決定したのか…。その〝プロセス〟をみんなで共有できる場なのだ。
実行は、それぞれの担当部門が重い責任を担っておこなうが、そこに至るプロセスを共有していることが、サンエ―の一番の強みになっていると、筆者は考えている。
ただし、早朝ミーティングで、すべての最終的な結論を出すわけではない。とりわけ、人事、開発、資金面については、役員を含む20人程度の経営幹部が、毎週土曜日に開く経営会議で決裁をおこなっている。
ただ、経営会議も、「早朝ミーティング」があるからこそ、有効に機能しているといえる。
組織を強くする「和」とダメにする「和」
チームプレーを第一としている同社は、同時にチームプレーが陥りやすいマイナス面についても、強く認識している。創業者は次の言葉を残している。
「組織プレーだからといって、個人個人が力を発揮しなくていいということではありません。組織プレーの言葉に甘えて、自分1人ぐらい手を抜いても大丈夫、自分1人ぐらい責任逃れをしても大丈夫、と思う心があれば、その人も組織もダメになってしまいます。
組織プレーで気をつけないといけないのは、甘えの構造の中にどっぷりと浸かってしまうことです。仲間意識のなあなあ主義を、組織の中にはびこらせることだけは、どんなことがあっても避けなければなりません」
創業者は、バランスを重視する経営者だったが、この組織プレーにおいても、じつに見事なまでにバランス感覚のある話を展開している。
組織プレーを強調しすぎると、個人の自主性が薄れ、結果として、組織のパワーが弱まってくる。自主性が過ぎると、個人プレーが目立つようになり、その弊害が出てくるようになる―—。
そこで、それぞれが自主性を発揮しての組織プレーを強調しているのだ。
チームプレーで、何より大事なのはチームの「和」だが、これほど曖昧な言葉もない。一般的には、仲良くすることが「和」と思われがちだが、それだと、甘えの構造になりかねない。
では、チームプレーで求められる「和」とは何なのか。
孔子は、「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」という。
孔子のいう「和」とは、「主体性をもった個人が調和すること」を意味し、「同」とは、「雷同すること」を意味していると聞く。
サンエ―の創業者がチームプレーで求めているのは、まさに、主体性をもった個人が調和することだと考えれば間違いない。
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