Q 支払遅延情報を入手した!何を検討すればいい?
A 支払遅延などの支払いに関する不安情報は、取引先に資金不足が生じているという倒産に直結する情報であり、緊急度が最も高い情報の1つです。
取引先の支払遅延情報を入手した場合、まずはその情報が確かなものか裏付けをとると共に、支払遅延が発生した原因を認識することが必要です。
解説
真偽確認のための情報収集
支払遅延情報の情報入手元に対して、情報の真偽を確認すると共に、調査会社への調査依頼等を通して真偽を判断するための情報を収集します。取引先との関係性において、取引先に直接ヒアリングすることが可能であれば、試みることも有効ですが、取引先が深刻な状態にある場合には、慎重な対応が必要ですので、注意が必要です。
売掛債権・買掛債務の残高確認
取引先への買掛債務は、将来取引先からの入金がない場合に、売掛債権と相殺できる担保の1つとなります。速やかに相殺手続を行えるように、債権や債務の残高を把握しておく必要があります。買掛債務がない場合、取引先から購入できる商品・製品はないかを検討しましょう。
契約内容の確認
期限の利益喪失条項や契約解除条項、所有権留保条項、出荷停止条項など、今後債権回収に移行する必要が生じた際に、速やかに移行できるように、必要な条項が漏れなく記載されているかを確認しましょう。条項に漏れがある場合には、覚書等により条項を追加することを検討する必要があります。
未出荷または出荷中の商品の確認
未出荷または出荷中の商品がある場合、商品の出荷停止を検討します。
取引先からの債権の回収が懸念される十分な理由があり、追加担保の提供など、取引先に対する不安を取り除くための措置を求めたにもかかわらず、取引先が応じなかった場合、商品の引渡しを拒絶できる「不安の抗弁権」が、判例で認められています。「不安の抗弁権」は、日本では明文の規定がありませんので、一定の条件の下では商品の出荷停止ができるように、あらかじめ契約書に定めておくことが望ましいと言えます。
商品の出荷停止は、取引先に対して支払能力や契約履行能力についての説明や担保提供を求めるなどの交渉をできる限り行い、それでも不安が残り、やむを得ない場合に実施します。
出荷停止条項の有無にかかわらず、十分な調査や交渉を行わずに、出荷の停止を行うと、逆に取引先から債務不履行に基づく損害賠償請求等を受ける可能性があるので注意が必要です。
今後の取引方針の決定
収集した情報および契約内容を基にして、自社として今後も取引を継続するか否かを決定します。取引を継続する場合は、現在の取引先の信用力に応じた新しい与信限度額を設定します。また、必要に応じて追加担保の取得の保全策を検討しましょう。
出典:本記事は、『取引先リスク管理Q&A』(リスクモンスター データ工場 著)からの転載です。
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