平成28年度の税制改正関連法が成立しました。中小企業にかかわる主な改正には、次のようなものがあります。
(1)法人実効税率の引下げ
法人の所得のうち、税金として納める割合を示す法人実効税率は現行32.11%ですが、これが平成28年度に29.97%に、平成30年度には29.74%に引き下げられます。
このうち法人税率は、現行の23.9%から平成28年度に23.4%に、平成30年度に23.2%に引き下げられます。
(2)減価償却の見直し
平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備・構築物・鉱業用の建物の償却方法については、定率法が廃止されました。
建物附属設備・構築物は、定額法のみとし、鉱業用減価償却資産(建物、建物附属設備および構築物に限る)については、定額法または生産高比例法の選択制となります。
(3)雇用促進税制の縮小
従来、正社員・非正規社員にかかわらず従業員の雇用を5人以上(中小企業は2人以上)かつ全体の1割以上を増やした企業の法人税は、1人につき40万円税額控除することができましたが、平成28年度からは、正社員の雇用のみに限定されます。
また、対象地域も、従来の全国から雇用環境の悪い地域に限定されることになりました。
(4)環境関連投資促進税制の見直し
太陽光発電、風力発電、水力発電など再生可能エネルギー等の設備投資をすると、特別償却または税額控除が認められるのが環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)です。
その適用期限は2年延長されますが、
② 売電を目的とする太陽光発電は減税の対象から除外
③ 税額控除の対象資産から車両運搬具を除外
といった見直しが行なわれました。
(5)役員給与損金算入の見直し
法人の支給する役員給与のうち、将来の役務提供の対価として交付する一定の譲渡制限付株式による給与は、事前確定の届出が不要となりました。
また、利益連動給与の算定指標の範囲に、自己資本利益率(ROE)など一定の指標を含むことが明確化されました。
(6)通勤手当の非課税限度額の引上げ
通勤手当の非課税限度額が現行の月額10万円から15万円に引き上げられました。平成28年1月1日以後の支払い分にさかのぼって適用されます。
その他の新法令・通達
障害者雇用について派遣元指針・派遣先指針の一部改正
「障害者の雇用の促進等に関する法律」の一部改正により、障害者に対する差別の禁止など、労働者派遣法に基づく派遣元・派遣先の指針も、所要の改正を行なうこととされました。
(平成28・3・22厚生労働省告示第77号=派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する件、同第78号=派遣先が講ずべき措置に関する指針の一部を改正する件)
健康保険法・厚生年金保険法の各施行規則の一部改正
「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」により、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大が実施されます。
これに伴い、健康保険法施行規則および厚生年金保険法施行規則について、所要の規定の整備が行なわれました。
(平成28・3・31厚生労働省令第75号=健康保険法施行規則及び厚生年金保険法施行規則の一部を改正する省令)
雇用保険法等の一部改正
失業等給付に係る保険料率の引下げ、育児・介護休業制度の見直し、雇用保険の就職促進給付の拡充等が行なわれます。
さらに、高年齢者の雇用を一層推進するため、65歳以降に新たに雇用される者を雇用保険の適用対象とし、高年齢者の希望に応じた多様な就業機会の確保を図るなどの措置を講ずることとされました。
(平成28・3・31法律第17号=雇用保険法等の一部を改正する法律)