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Taxマインドの磨き方 第7回

同族会社にありがち?! その経費に「経済的合理性」はありますか?

[ 森 大志<もり・たいし>(税理士)]

税法を理解することは、法律の専門家でも難しいといいます。ましてや会社で総務や経理を担当している人の多くは法律に関してはズブの素人。税実務において、しばしば判断に迷うことがあるのも当たり前でしょう。そこで本連載では、「税の考え方」のポイントについて解説します。

その経費に経済合理性はあるか

「合法的な節税」とは?

「できれば税金を払いたくない!」

 誰だって一度くらい、そんな思いが頭をよぎったことがあるはず(?)です。本音をいえば、多くの人が「税金を払わなくて済むなら払いたくない」と思っているでしょう。

 でも、不法に税の負担を逃れる脱税は犯罪行為です。そこで、

「違法な節税はダメだけど、合法的な節税ならしたい」

 と口癖のようにおっしゃる経営者の方が多くおられるのですが、私は、「合法的な、節税???」と心の中で呟いてしまいます。

 そもそも節税とは、どのようなことをいうのでしょうか。

 節税とは、税法の規定の範囲内で経済的合理性のある行為を行い、結果として税を軽減することです。すなわち節税は合法な行為なのですから、「合法的な節税」「違法な節税」という考え方自体があり得ないのです。

 節税を行うことに何も問題はありません。むしろ、中小企業の経営者が節税努力するのは当然のことです。

 経営者は、堂々と節税を考えましょう。

経済的合理性を欠く節税策は問題!

 ただし、違法な行為ではありませんが、課税当局との間でしばしば問題になるのが租税回避です。

 租税回避とは、形式的には合法ですが経済的合理性を欠く行為を行い、その結果として税の負担を不当に回避または軽減することです。

 日本では、資本金1億円以下の中小企業が企業全体の9割以上を占め、そのほとんどが同族会社といわれます。その同族会社でよく行われる節税が、

・経営者の親族に払う給与
・役員社宅
・短期の前払費用、消耗品費等、特別償却 等々

 などです(他に、生命保険を使った課税の繰延べもポピュラーな節税策です)。

 先程も述べた通り、節税自体は違法ではありませんが、それも度が過ぎると租税回避行為に該当することがあります。実際、経営者の親族等に支払う役員給与は、税務調査などで「支給額は業務内容や世間相場に照らし合わせて適正か否か」がよく問題になります。

 また、「短期の前払費用」や「消耗品費等」などについても、経済的合理性を欠くものについては、損金に計上することに制限が設けられています。

 例えば「消耗品費等」の損金算入について、法人税基本通達には次のような規定があります。

(消耗品費等)
2-2-15 消耗品その他これに準ずる棚卸資産の取得に要した費用の額は、当該棚卸資産を消費した日の属する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が事務用消耗品(中略)その他これらに準ずる棚卸資産(各事業年度ごとにおおむね一定数量を取得し、かつ、経常的に消費するものに限る。)の取得に要した費用の額を継続してその取得をした日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加)
(注) (省略)

 消耗品等を取得したときの費用を何でも損金に算入することが認められると、節税目的で通常購入する額を超えて消耗品等を購入しようと考える知恵者もいるでしょう。しかし、そうしたケースについては租税回避行為として損金への算入を否認されます。

 脱税は論外ですが、節税も行き過ぎると租税回避とみなされます。納税モラルの低い企業というレッテルを貼られたときの代償は計り知れません。社会的な信用が失墜するだけではなく、最悪の場合、多額の税負担により倒産に至ることがあります。


ワンポイントレッスン

節税は合法だが、度が過ぎると租税回避行為に該当

 たとえ合法であっても、経済的合理性を欠く行為は租税回避とみなされます。

▼連載「Taxマインドの磨き方」
著者 : 森 大志<もり・たいし>(税理士) 専修大学法学部卒業。平成元年、森会計事務所(森大志税理士事務所)開設。「中小企業経営者を応援したい」という思いからスタートしたブログ「税理士森大志(もりたいし)のひとりごと」がネット界で一躍有名となり、「ジャパンブログアワード2008」のビジネス部門グランプリを受賞。
http://www.tabisland.ne.jp/aoinfo/kanto/mori/
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