平成18年4月から、高年齢者雇用安定法の改正により、定年制を導入しているすべての企業に、65歳までの雇用確保措置が義務づけられました。
高年齢者雇用安定法で義務づけられた雇用確保措置
- 65歳までの定年の引き上げ
- 65歳までの継続雇用制度の導入(再雇用制度、勤務延長制度など)
- 定年の定めの廃止
当初、2の継続雇用制度については、労使協定により一定の基準を設け、その基準に合う対象者のみを継続雇用すればよいこととなっていました。
しかし平成25年4月からは、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組みが廃止され、継続雇用制度を導入する場合は、希望者全員を対象としなければならなくなりました。
そうしたことから、継続雇用した従業員との間で、賃金などの労働条件や雇止めについてトラブルを抱える企業からの相談が増えています。
定年後継続雇用に対するスタンスを明確に
定年後継続雇用の労働条件でトラブルを抱えている企業からの相談をみると、継続雇用制度について、あまり検討せずに導入しているケースがあります。
たとえば、継続雇用を進める目的が「人材の活用」なのか、「雇用の保障」なのか。
導入する制度が「勤務延長」なのか「再雇用」なのかによっても、労働条件の決定には違いが出ます。
「人材の活用」とは、業務の必要性から高年齢者を活用するべき仕事が現実にあって、高年齢者の経験・能力等を活用しつつ、若年層の確保・育成を進めようとするものです。
こうした目的の場合、業務の内容や貢献度、期待値などに見合った賃金や処遇を決める必要があります。
一方的な賃金や労働条件の低下はモチベーションを下げ、継続雇用の拒否や離職を招いてしまいます。
また、会社も一定の投資効果を得られるはずなので、継続雇用によって生じる人件費などのコストも十分ペイするものと考えられます。
「雇用保障」という考え方になると、高年齢者の雇用や生活の保障を目的としたものとなります。
企業の大半は雇用を保障する代わりに従前の契約をいったん終了し、働きに見合うよう労働コストを下げるために業務内容や労働条件を見直さざるを得ないでしょう。
賃金についても、在職老齢年金や高年齢者雇用継続給付金を考慮して、どれだけ減額できるのか、生活をしていけるのか、などの限界点を選択するような考え方になると思います。
「再雇用」でありながら、実態は「勤務延長」という企業も多い
継続雇用制度についても、主旨が「勤務延長」であれば、対象者は希少価値の高い専門熟練社員などであり、その職務内容からしても定年までの賃金処遇を維持する必要性が高いと思われます。
「再雇用」であれば、定年前の雇用契約をいったん終了し、継続雇用後の期間については改めて労働契約を結び直すこととなるため、定年前の賃金処遇を清算しやすくなります。
多くの企業では、定年後継続雇用を「再雇用」として取り扱っていると思いますが、定年前の勤務形態・業務内容がそのままという、実質的な「勤務延長」が多いのが実態です。
会社として継続雇用が「再雇用」であると認識し、そのうえで対象となる従業員が「人材の活用」のためにこれからも必要なのか、法令上の「雇用保障」を満たせばよいのかを見極めて労働条件の決定を行わないと、トラブルの元となります。