消費者契約法見直しの概要
消費者保護を目的とする消費者契約法は 2001 年 4 月に施行され、消費生活相談の場で消費者と事業者との間の紛争解決に活用され、裁判例等も蓄積してきました。
2006 年には消費者団体訴訟制度(差止請求)が導入されましたが、情報通信技術の発達や高齢化の進展などの社会経済状況の変化への対応等の観点から、契約締結過程及び契約条項の内容に係る規律等のありかたを検討するという方針が打ち出されていました。
ことし3月に決定された消費者基本計画工程表では、2015 年度に法改正案の検討を行なうことが明記されていました。
その方針を受け、消費者委員会消費者契約法専門調査会が消費者契約法改正についての「中間取りまとめ」を公表しました。
中間取りまとめは、専門調査会の審議の内容をふまえ、現時点の議論を整理し、今後の検討の方向性を示すものです。
「総則」「契約締結過程」「契約条項」等に関する個別の論点ごとに、問題の所在、意見の概要、今後の検討の方向性等が記載されています。
「勧誘」の定義を拡大
そこで法改正の影響の大きい論点とみられているのは、「勧誘」要件のありかたです。
消費者契約法4条では、消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、不実告知など不適切な情報を提供したことによって誤認をし、誤認によって契約を締結したときにはその契約を取り消すことができる旨を定めています。
現行法では、不特定の者に向けた広告やパンフレットなどは、客観的にみて特定の消費者に働きかけ、個別の契約締結の意思の形成に直接に影響を与えているとは考えられず、ここでいう「勧誘」に含まれないとされています。
しかし、インターネットの普及等で情報の発信や収集方法、契約締結の方法が多様化したことなどにより、「不特定多数に向けた広告等を見ての契約締結」からトラブルに至った事例もみられます。
そこで、事業者が、「当該事業者との特定の取引を誘引する目的をもってする行為をしたと客観的に判断される場合」で、重要事項についての不実告知等によって消費者が誤認をしたときは、意思表示の取消しの規律を適用することが考えられるとしています。
高齢者の被害に対応
このほか、認知症の高齢者など、消費者の判断力の不足等を利用して不必要な契約を締結させる事例について、一定の手当てを講ずるための規定を設けることなどが検討されます。
一方で、経済界は消費者保護が強くなりすぎることによる経済活動への影響に懸念を示しています。
そこで、改正法の適用対象となる行為の範囲については、事業者に与える影響等もふまえて引き続き検討する、としています。今秋以降も団体等からのヒアリングを行ない、中間取りまとめに対する意見を幅広く聴取して検討を深め、今年度内に最終報告書と改正法案をまとめる方針です。