他人の写真をネットに掲載したいのですが…。どんな点に注意すればいいでしょうか。
- 質問者
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他人のサイト上の文章を転載したりまとめたりする場合に気をつけなければいけない点については第2回(ブログで他人の著作物を引用したり、「まとめサイト」を作ることに問題はない?)で教えてもらいました
それでは、写真を掲載したい場合は、何が問題になりますか
- 弁護士
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写真についても文章の場合と同じように考えることができます。
すなわち、- 写真が著作物に該当するのか
- 著作物に該当するとして、写真を掲載することが引用(著作権法32条1項)に該当するのか
を検討すればよいというわけです。
- 質問者
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写真や文章であれば著作物にあたると思いこんでいましたが、著作物として保護されるためには、創作性が必要でしたね(第1回 著作権とは何か? ネットで情報を発信するとき、どんな注意が必要か?参照)。
- 弁護士
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はい。写真が写真の著作物(著作権法10条1項8号)として著作権法上保護されるためには、当該写真が「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法2条1項1号)でなければなりません。
創作的に表現したものかどうかは、どのように判断すればよいのですか?
- 弁護士
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そうですね、まずは分かりやすいようイメージでお話ししてみましょう。
芸術性の高い写真であれば創作性が認められると考えてよいでしょう。
他方で、証明写真、防犯カメラの写真、平面的な絵画を記録用に撮影した写真などについては創作性が認められないと考えられています。 - 質問者
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芸術性で区別されるということですか? 判断が難しそうですね…。
- 弁護士
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う〜ん、誤解のないように少しくわしく説明しますね。
創作性が認められるためには、独創性や芸術性までは必要はありませんが、表現者の個性が現れている必要があります。
例えば、証明写真についてみてみますと、正面から固定して決まった構図で撮影されるものですから、構図や撮影方法、現像方法に創意工夫の余地はほとんどなく、個性が現れる余地もないということになります。
そのため、証明写真には一般的には創作性がないと考えられているわけです。 - 質問者
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なるほど! 芸術性ではなく、何らかの個性が現れているかどうかで区別されるわけですね。
たいてい場合、写真は著作物に当たると考えておいたほうがいいでしょう。
- 弁護士
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まとめますと、創作性は、被写体の選択、組合せ、配置等や、撮影(レンズの選択やシャッター速度等)、現像の手法等に個性が現れているかを考慮して判断されているといってよいと思います。
いろいろ細かいことも説明しましたが、写真の著作物性のハードルは高いものではなく、上で挙げた例のように著作物性が否定される写真は例外と考えてよいでしょう。
- 弁護士
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そうなりますね。
なお、引用に該当するかどうかについては、第2回(ブログで他人の著作物を引用したり、「まとめサイト」を作ることに問題はない?)で解説したとおりです。引用して掲載する場合は、出所(引用元)の明示を忘れないようにしてください。
- 質問者
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写真を掲載する場合の注意点はよく分かりました。
実は、トリミングして掲載しようと考えている写真もあるのですが、そのまま掲載する場合と違うところはありますか?
- 弁護士
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トリミング等改変して利用する場合は、同一性保持権(著作権法20条1項)を侵害することにならないか注意する必要があります。
条文を確認してみると
著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。
とあります。
著作者は自分の作品に対してこだわりを持っていますから、自分の意思に反して作品が改変されないよう、その精神的・人格的利益を保護するために、同一性保持権が定められているわけです。
- 弁護士
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原則としてはそういうことになります。
しかし、教育目的で教科書に掲載する場合等例外的に改変が許される場合が規定されています(著作権法20条2項各号)。
2 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
今回例外として考えられそうなのはそのなかの四号です。
四 前三号に掲げるもののほか、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変
- 質問者
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「やむを得ないと認められる改変」ですか…?
- 弁護士
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個別具体的に判断するしかないのですが、人格権侵害に対する例外規定であることから、その適用には慎重にならざるを得ず、「やむを得ないと認められる改変」というためには、教育目的(20条2項1号)の場合と同程度に改変する必要性がなければならないと考えられています。
そのため、裁判例においても、この規定の適用が認められた事例はそれほど多くありません。
- 質問者
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これまで写真を加工することを簡単に考えていましたが、よほどの事情がないと難しそうですね。
- 弁護士
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著作物を改変して利用する場合は、引用に該当するかどうかだけでなく、同一性保持権の侵害にならないかを慎重に検討する必要があるということを覚えておいてください。
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