著作権法で禁止されている「著作物の利用方法」を教えてください。
- 質問者
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著作権は、「著作物を誰に、どのように利用されるかを決めることができる権利」であると教えてもらいました(著作権とは何か? ネットで情報を発信するとき、どんな注意が必要か?参照)。
ところで「利用」といってもいろいろあると思います。どのような利用方法が問題となるのでしょうか?
- 弁護士
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はい、著作権法は、著作物の利用者に不測の不利益がないように、禁止の対象になり得る利用方法(著作権者に与えられる権利)について21条から27条までに限定して列挙しています。
① 複製権(21条)
② 上演権・演奏権(22条)
③ 上映権(22条の2)
④ 公衆送信権等(23条)
⑤ 口述権(24条)
⑥ 展示権(25条)
⑦ 頒布権(26条)
⑧ 譲渡権(26条の2)
➈ 貸与権(26条の3)
⑩ 翻訳権・翻案権(27条)
⑪ 二次的著作物の利用に関する原告著作者の権利(28条)なお、ここに規定される著作権とは別に、著作者の人格的利益を保護する著作者人格権というものもありますが、今回は著作権について説明していきます。
- 質問者
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①から⑪までに挙げられていない行為であれば、自由にしてよいのでしょうか?
- 弁護士
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基本的にはそのように考えてもらって大丈夫です。当たり前のことだと思われるかもしれませんが、自分で買った本を自由に読むことができるのは、①から⑪のどれにも当たらず、著作権者の権利が及ばないからなのです。
- 質問者
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そうはいっても、聞き慣れない言葉もあって不安です。ブログやSNSで情報発信をしていくにあたっては、どのような行為が問題になりますか?
ネット上での情報発信だけでなく、普段生活するうえで最も身近なのが、「複製権」の問題でしょう。
- 弁護士
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まずは、複製権について勉強していきましょう。
- 質問者
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複製という言葉についてはなんとなくイメージができそうです。コピー機で複写することがこれに当たるのではないですか?
- 弁護士
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そうですね。複製については、著作権法で「印刷、写真、複写、録音、録画その他の方法により有形的に再製すること」と定義されています(2条1項15号)。
ですから、コピー機を使う方法だけでなく、ワープロソフトを使って書き写すのも複製に当たりますし、音楽CDの楽曲をCD-Rに録音することや、インターネット上の動画をパソコンのハードディスクにダウンロードすることも複製に当たります。
どんな場合だと、著作権者の許可が必要になりますか?
- 質問者
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私はビジネスを始めるにあたって、ビジネス書の必要な部分を図書館でコピーしたり、参考になりそうなインターネット上の文章や画像をダウンロードしたりしようと考えていたのですが、著作権者の許可をとらなければいけないのでしょうか?
- 弁護士
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個人的に利用する目的でコピーしたりダウンロードしたりするだけなら、「私的使用のための複製」なので、問題ありません(30条)。著作権法は、著作物の「公正な利用」に配慮して、著作権者の権利を制限しているのです。
(私的使用のための複製)
第30条 著作権の目的となっている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、(中略)その使用する者が複製することができる。ただし、条文にもあるように、「私的使用」というためには個人や家庭内での利用に限られるので、会社で業務上利用するために資料をコピーするのは問題です。
- 質問者
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あくまで「公正な利用」にとどまる範囲で、例外的に複製することが許されている、ということなのですね。
- 弁護士
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そのとおりです。ですから、個人的に利用する目的であっても、違法にアップロードされた楽曲や動画をダウンロードすることは「公正な利用」とは言えないので許されていませんし、刑事罰の対象にもなり得るので注意が必要です。
ブログ上で引用したり、まとめ記事を作ったりするのは「私的使用」に当たりますか?- 質問者
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私は自分のブログで、他のウェブサイトに掲載されている文章を転載して、論評を加えたり、有用な記事をまとめて紹介したりしようと考えています。SNS上の個人的な知り合いにだけ公開するつもりなのですが、これも「私的使用」に当たるでしょうか。
- 弁護士
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公開範囲がある程度限定されているとはいえ、家庭内に準ずる範囲内というのはなかなか難しいでしょう。特定されたごく少人数のグループでない限り、「私的使用」には当たらないと考えられます。
- 質問者
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そうすると、他人の文章を利用するには、必ず許可をとらなければいけないのでしょうか。著作権者の連絡先が分からない場合は、一切利用できないということになりませんか?
「公正な慣行」に従って「正当な範囲」で「引用」する場合は、著作権者の許可は必要ありません。- 弁護士
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著作権法32条1項によると、
「公表された著作物は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内であれば、引用して利用することができる」
とあり、「引用」する場合は、無断で利用することができます。
- 質問者
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「公正な慣行」とか「正当な範囲内」とか、よくわかりません。結局、どのような場合に利用できるのでしょうか。
- 弁護士
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実は統一的な見解はないのですが、
① 引用してきた部分と自分独自の表現部分とが明瞭に区別できること
② 量的・質的に独自の表現部分が主、引用部分が従という関係(主従関係)にあること
③ 引用する範囲が合理的な範囲内であること
④ 出所(引用元)が明示されていることなどが必要であると考えられています。
ご質問の前者のケースについてみると、引用元を表示した上で、論評を加えるのに必要な範囲で転載するのであれば、4要件を充足する可能性が高く、「引用」と認められる可能性があると考えられます。
他方、後者のケースについては、その性質上、いわゆる「まとめサイト」によく見られるように、引用部分が記事の大部分を占め、独自の表現部分がない場合が多く、主従関係の要件を充足しない可能性が高く、「引用」と認められる可能性は低いでしょう。
- 質問者
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なるほど! まとめサイトって「一覧性があって便利だな~」
くらいに思っていましたが、著作権法的には問題があるんですね。勉強になりました。 - 弁護士
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まずは、
- 禁止の対象になり得る利用行為にはどのようなものがあるのか
- 無断で利用できる場合としてどのようなものがあるのか
この2点を身につけていただきたいと思います。
- ▼連載「弁護士が教える「ネットの法律&マナー」講座」
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- 第4回 ステマに注意! 企業から頼まれて商品レビューを書く場合に気をつけたいこと
- 第3回 告訴されることも! ネットへの書き込みで刑事上の責任を問われる場合とは?
- 第2回 ブログで他人の著作物を引用したり、「まとめサイト」を作ることに問題はない?
- 第1回 著作権とは何か? ネットで情報を発信するとき、どんな注意が必要か?