著作権とは、どういった権利なのでしょうか?
- 質問者
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はじめまして、私は来月からビジネスを始めようと思っている大学生です。まずはブログやSNSで積極的に色々なことを発信していこうと思っていますが、著作権について不安があるため相談しに来ました。著作権とはどういった権利なのでしょうか。
- 弁護士
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著作権は、平たく言うと、「自分の作品(著作物)が、誰にどのように利用されるか」を決めることができる権利です。ある種の独占権ですね。
著作権があるため、私たちは他人の著作物を無断で利用することができません。他人の著作物を利用するためには、「引用」にあたるなどの場合を除き、原則として、著作権者からライセンスを受ける必要があります。
- 質問者
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どのような作品でも著作権が発生するのでしょうか。
- 弁護士
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著作権法2条1項1号を見てみますと、「著作物」の定義として、このように規定してあります。
「著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう」
ここで重要なのは、「創作的に表現したもの」という点です。著作物として保護されるためには、「創作性」が必要になります。
具体的には、どういったものに「創作性」が認められるのでしょうか。
- 弁護士
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独占権を与えると不都合があるような「ありふれた表現」や、「単なる事実やデータ」については「創作性」は認められません。もっとも、「創作性」の高さまでは求められていません。
著作権法には9つの例が挙げられています。
①言語(小説・脚本・講演など)
②音楽(歌詞・楽曲)
③舞踏(ダンスなどの振付)
④美術(絵画・イラストなど)
⑤建築
⑥図形(地図や模型など)
⑦映画(映画、アニメなど)
⑧写真
⑨プログラム - 質問者
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大体イメージ通りのものが並んでいますね。
- 弁護士
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この中で明示はされていませんが、漫画なども当然に著作物です。また、ゲームは、プログラム・音楽・映像といった著作物の複合体だとみることができます。
- 質問者
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ひとまずは、「創作性」のある文章や音楽や写真などについて著作権の保護が及ぶということを覚えておきたいと思います。著作権は表現者を保護するための権利と考えればよいわけですね。
著作権には、①表現者の保護、②著作物の公正な利用という2つの役割があります。
- 弁護士
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①表現者を保護することは、著作権の重要な役割の一つではあります。他方で、著作権法は、②著作物の公正な利用にも留意しています。
例えば、表現の前段階である「アイデア」や「設定」などは、基本的には保護されないという線引きになっています。もし物語の設定やアイデアのレベルで著作権という独占権を認めてしまうと、他の人は著作権者の許可を得ないと似た話をつくれなくなってしまいます。それでは人々の表現活動が大きく妨げられてしまいます。
著作権は、いつどうすれば発生するのでしょうか。- 弁護士
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著作権は、著作物を創作した瞬間に発生します。商標権や特許権とは異なり、登録などの手続きは一切不要です。
- 質問者
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もう一つ質問があります。私は、新しいビジネスを立ち上げようと考えています。音楽や小説といったいわゆる知財と呼ばれるものを扱うわけではないのですが、そういうビジネスでも著作権は重要になるのでしょうか。
- 弁護士
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ビジネスを行うにおいてHPや広告といったウェブ上での発信は欠かせないものとなっています。そうである以上、何を扱うかに関わらず、ビジネスをする上で著作権の問題は避けられません。
- 質問者
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先生は、eスポーツと呼ばれる、ゲームをスポーツとして扱っている業界のお仕事を中心的にされていると聞きました。先生のところには、具体的にはどのような相談が来るのでしょうか。
ビジネスには、①守りの著作権と②攻めの著作権の2つが関係します。著作権周りの相談は、主に2つの角度から来ます。それは先ほどの著作権の2つの役割に通じます。
- 質問者
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①著作権者を保護する役割と、②著作物の公正な利用を促す役割のことですね。
- 弁護士
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そうですね。1つは、「自分の作品を守りたい」という方向性の相談です。言わば「守りの著作権」についての相談ともいえます。
例えば、「HPに載せていた写真が無断で転載された」という相談や、「文章を勝手に加筆・修正されて掲載された」といった相談が典型的なものです。
後者は、著作者の意に反する改変をされない権利(「同一性保持権」)について問題が生じている場面です。悪気がなくトラブルが起きることも少なくありません。 - 質問者
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自分が著作権者になるときは、「守りの著作権」について考える必要があるということですね。もう一つはどのようなものでしょうか。
- 弁護士
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もう一つは、他社のIP(知的財産)を利用したビジネスをしたいという相談です。こちらは、積極的に新たなものを生み出す試みという意味で、「攻めの著作権」ということができるでしょう。
例えば、コラボレーション作品を検討している事業者の提案を他の事業者に持っていくこともあります。また、他社のゲームを利用したゲーム大会を開催したいといった相談も、この「攻めの著作権」の発想です。
- 質問者
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得意分野や企業文化の違う他の事業者同士が手を組むのは、新たな発想を生み出すきっかけとしてとても大事そうですね。わくわくします。ありがとうございました。
- 弁護士
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今回は、①著作権とは何か、②「守りの著作権」「攻めの著作権」という2つの発想について、大まかにイメージをもって頂ければと思います。
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