安全管理措置などの義務が守れそうにありません!
安全管理措置などの義務が守れそうにありません。今後の情報管理についての法制度は、どのようになっていくのでしょうか。どのような心構えをもっておくべきでしょうか。
マイナンバー法は無理を強いるものではありません。
マイナンバー制度の運用が開始され、不安の声をよく耳にするようになりました。
個人番号関係事務(従業員などのマイナンバーを、源泉徴収票などに記載して、行政機関に提出する事務)の実施者としての会社の義務について、マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)にはどのように書いてあるかというと、総則に以下のような条文があります。
「努めるものとする」と規定されていますので、施策に協力する義務は、基本的には努力義務として想定されていることがわかります。また、努力義務ではなく通常の義務として規定されているものも、違反した場合の罰則がないものが少なくありません。
こういった規定ぶりは、法律は事業者に無理を強いるものではないということの現れともいえます。
また、安全管理措置についていわれている「壁や間仕切りの設置」や「座席配置の工夫」についても、あくまでも例示であり、必ずしもこのような形で行わなければならないものとはされていません。
無理のない範囲で適切な措置を行えばよいのであり、例示にあるような形で措置を行っていないことがただちに義務違反の評価につながるわけではありません。
今後は、個人情報等を厳格に保護しつつ、情報の利活用を促進する方向で、法令等の整備がされていくものと思われます。
個人情報のひとつであるマイナンバーについても、今後、法令の改正が行われていくと思われますが、本年(2015年)の9月には、個人情報保護法も大きく改正されました(今後3年ごとに改正していくといわれています)。
その中で強調されているのは、①センシティブな個人情報の厳格な保護と、②情報の利活用です。
①センシティブな個人情報の厳格な保護
マイナンバー以外の個人情報についても、一定のセンシティブな個人情報は、現状よりも厳格に保護されることになります。
具体的には、新たなカテゴリーとして「要配慮個人情報」というものができ、運用されていきます。
②情報の利活用
他方で、匿名に加工した情報の積極的な利活用も目指されています。
情報の利活用は、ビッグデータという言葉に関連づけられて語られることが多くなっています。私たちの身近な部分ですと、ネットショッピングでの「お勧め商品」の自動生成などが、まさに情報の利活用の典型です。
今後は、重要な情報を厳格に保護させる一方で、匿名化した情報を積極的に利活用して事業活動を活性化させる、という流れになっていくものと思われます。
最新の情報を習慣的にチェックすることが求められます。
情報に関する法制度は、今後も頻繁に更新されていきます。
法改正などがなされる都度、適切に対応していくことは、事業者にとって大変なことだと思います。制度をわかりやすく広めていくことは、弁護士としても重要な役割だと感じています。
日ごろより、本サイトのように手軽にチェックできるところから、定期的に情報を仕入れていくことが必要になるかと思います。
- ▼連載「中小企業とその社員のためのマイナンバー対応Q&A」
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- 第12回 安全管理措置などの義務が守れそうにありません!
- 第11回 社員からマイナンバーの提供を受けるときの「本人確認」って?
- 第10回 そもそもマイナンバー制度を始めた目的は?
- 第9回 もしもマイナンバーの提出を拒否されてしまったら?
- 第8回 法人番号とは何? どんなときに使うものなの?
- 第7回 採用内定者や派遣社員からマイナンバーを取得するタイミングはいつ?
- 第6回 クラウドサービスを使って収集・保管するときに気をつけることは?
- 第5回 社員などから集めたマイナンバーを管理するうえでの注意点は?
- 第4回 マイナンバーについて、いつまでに、どのような内容の従業員教育が必要?
- 第3回 もしも、マイナンバーを漏えいさせてしまったら?
- 第2回 アルバイトからマイナンバーを取得するときに注意することは?
- 第1回 マイナンバー法は、すべての事業者に関係する法律なの?