親が子供の口座にお金を振り込むと「贈与」とみなされる?
2016 年 1 月から、いよいよマイナンバーの利用が始まります。
「住民票を有するすべての方に対して、1人1番号のマイナンバーを住所地の市町村長が指定します。原則として、一度指定されたマイナンバーは生涯変わりません。マイナンバーは、国の行政機関や地方公共団体などにおいて、社会保障、税、災害対策の分野で利用されることとなります。」
(内閣官房ホームページより)
このマイナンバー制度の運用において、巷ではさまざまな間違った情報が独り歩きしているようです。例えば、「親の口座から子供の口座にお金を振り込むと、贈与とみなされ贈与税がかかるようになる」というような記事を目にしました。
本当にこのようなことが起きるのでしょうか?
地方に住む親が、東京の大学に通っている子供の口座に生活費を振り込んで、贈与税がかかりますか。そんなわけがありません。
この記事の問題点は、「お金を振り込んだ事実をもって、贈与とみなす」と誤った解釈をしているということです。
実際には、親子間でお金の貸借をすることもありますし、振込みの事実をもって贈与とみなすことは、あまりに乱暴なことなのです。贈与でもないことを「贈与とする(みなす)」なんてことが、できるわけがありません。課税当局がそのようなことをすれば、課税の取り消しを求める裁判が多発するでしょう。
「みなす」のと「推定する」のはどこが違うか
ただし、税務調査において、親の口座から子供の口座にお金を振り込んだ事実が分かれば、「贈与と推定する」ということはあります。
あくまでも「推定する」のであって、「みなす」のではありません。その場合、贈与でない証明をすることにより、贈与税を課税されることはありません。
マイナンバー制度が始まることによって、預金などの個人情報を役所が把握しやすくなりますが、だからといって税金の徴収が増えるものではありません。ただし、収集した情報を元に、事実に即して税を課したり、新たな課税制度の創設がしやすくなるということはあるかもしれません。
「みなす」と「推定する」の違い
「みなす」とは、法律的にそのように取り扱うということです。
「推定する」とは、状況からそのように判断できるということです。ですから、そうではないという事実を証明できれば、判断は修正されます。
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