贈与税の基礎控除内で積み立てた「子供名義の預金」に税金が…
さて、子供名義の預金は「誰のもの」でしょうか——?
おそらく多くの方が、こう思っているでしょう。
「子供名義の預金なんだから、子供のものに決まっている!」
ところが、法律のうえではそうとも限らないのです。
10店の飲食店を経営するAさんは、子供B名義の普通預金口座を作り、Bには内緒で、毎年決まった額をBへの「贈与」として入金してきました。贈与税の基礎控除は110万円ですから、100万円を10年間にわたって、通帳に記録が残るようにして振り込みます。
昨年8月の時点で金額が1,000万円になったので、Bに贈与の事実を話し、通帳と印鑑を渡しました。
最近になってAさんの会社に法人税の税務調査が入りました。その時、飲食店は現金商売なこともあり、国税調査官から、社長であるAさんの個人名義の普通預金通帳の提示を求められました。
その際に、Aさんの通帳から毎年100万円を子供であるBさんに振り込んでいる事実を調査官から指摘されました。
Aさんは、子供Bへの贈与として毎年100万円を振り込んでいたこと、昨年の8月に贈与の事実を明かし、通帳と印鑑をBに渡したことを説明しました。
それを聞いた調査官は、昨年の8月にAさんからBへ1,000万円の贈与があったと認定し、後日、Aさんは贈与税の申告漏れを指摘されました。
本人が知らずにもらっていた財産は「贈与」にならない
Aさんは、贈与した記録が残るように、わざわざ銀行口座に振り込んでいたのに、なぜ申告漏れを指摘されたのかわかりませんでした。基礎控除額は110万円ですから、年間100万円の贈与であれば非課税になるはずです。
はたして何が問題だったのでしょうか?
民法では、贈与について次のように規定されています。
民法549条
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
Aさんの例で考えますと、Bは、AさんがB名義の口座に毎年100万円振り込んでいることを知りませんでした。そのため、相手方であるBが贈与を受諾したのは、昨年の8月にAさんが通帳と印鑑をBに渡した時になるとみなされたのです。
内緒の贈与はダメ!
贈与には「意思の合致」が必要です。贈与をするときはお互いの意思を確認し、その証拠として贈与契約書を作成することが望ましいでしょう。
そのうえで、贈与契約書の内容に基づいて、記録が残る方法(銀行振込など)で贈与します。また、贈与契約書は2通作成し、確定日付を付け、両者が保存します。
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