語源が語る「経理」の仕事とは
経理担当者として新しくスタートを切るみなさん、経理配属、おめでとうございます!
ひと口に「経理」といっても、その中身は多岐にわたります。社員の交通費等の精算や日々の記帳業務にはじまり、会社の債権管理や資金調達まで、これらはすべて経理の仕事です。
そもそも「経理」という単語は、経営管理に由来していることをご存じでしょうか。
つまり、「経理に配属された」ということは、経営管理の一端を任されたということ。それだけ、やりがいがあるのが経理という仕事です。
ですから、「おめでとう!」と申し上げたのです。
経理担当者には、じつに幅広い業務が用意されています。ひとつずつステップを踏んで経理としてのスキルを磨いていけば、いずれは社長から信頼される経営参謀のひとりとして、経営の舵取りを任されることになるはずです。
本連載では、経理業務の具体的なノウハウというよりも、経理担当者としてこれだけは身につけてほしい基本的なリテラシーや心構えについて、お伝えしていきたいと考えています。
そして、経理という仕事の奥深さ、面白さを少しでもわかっていただければと思います。
「豆を数える人」で終わるな!
アメリカの著名な実業家で、自動車メーカーのフォード社とクライスラー社を立て直したアイアコッカ氏は、自著の中で経理担当者のことを次のように表しています。
豆を数える人がいなければ、会社は無駄なエネルギーばかり放出し、ついには倒産する。
『アイアコッカ わが闘魂の経営』(ダイヤモンド社刊)より
会社が困った状況に陥ったとき、あるいは困った状況に陥らないようにするために、あなたがこれから身につける経理マンとしての知識が大いに役立つはずです。
一方、アイアコッカはこうもいっています。
豆を数える人の最大の欠点は、専守防衛、保守的で悲観論に傾きがちなことである。(中略)豆ばかり数えていては、需要に応え競争に勝つことができない。
『アイアコッカ わが闘魂の経営』(ダイヤモンド社刊)より
経理担当者には、会社を危機的状況から守るだけでなく、「株式公開をしよう」「合併・買収をしよう」というような攻めの場面でも、その知識を大いに発揮することが期待されます。
経理の仕事というと、どうしても簿記のイメージが強いと思いますが、簿記は経理の基本知識のほんの一部でしかありません。経理の仕事に必要な知識は、会計や税務、そしてITのスキルなど、いろいろです。
とくに会社を成長させようというとき、大きな経営判断が求められるときなど、経理には「数字」を上手に使って、経理責任者としての考えを適切に表現することも大事になってきます。
経理の仕事をするうえで、数字は最強のコミュニケーションツールです。ITを使って、数字を分析・加工・表現することは、もはや経理担当者にとって必須の技術といっていいでしょう。
経理としてのスキルを磨き、「豆を数える人」に甘んじることなく、ぜひ、数字を経営に活かす「豆を仕切れる人」になってください。
- ▼連載「新人経理担当者のための仕事術」
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- 第12回 「会計直感力」を養うために欠かせない8つの視点
- 第11回 「会社の金」はカネと思うべからず! 抜かりのない管理が身を守る
- 第10回 経理の基本は「6S」と「5W1H」
- 第9回 「数字」はビジネスの共通語! ルールに沿って、正しく書く
- 第8回 経理が扱うすべてがインサイダー情報! 経理担当者に求められる心構え
- 第7回 経理の基本ルールは「企業会計原則」に基づいている
- 第6回 千里の道も一歩から! まず経理処理に関する社内ルールを熟知しよう
- 第5回 仕事は段取りが8割! 経理の年間スケジュールを把握すべし
- 第4回 経理の仕事は「2つの会計・3つの業務・4つの行為」
- 第3回 会社規模に応じて伸び縮みする経理担当者の守備範囲
- 第2回 経理の仕事は会社の営業サイクルと一緒に回っていく
- 第1回 「豆を数える人」で終わるなかれ!「経理」の〝語源〟と仕事
本記事は、『即戦力になる!基本が身につく 経理に配属されたら読む本』(日本実業出版社)より内容を抜粋し、企業実務オンライン用に再構成したものです。
『即戦力になる!基本が身につく 経理に配属されたら読む本』
村井 直志 著 日本実業出版社 発行 A5判 208頁 定価1,400円(税別)
経理に配属された新人が「即戦力」になるために必要な基本知識を解説
「経理部に配属されたものの、仕事の全体像や実務がよくわからない」という人向けに、会計・税務に関する基本事項のほか、業務をするうえで必要不可欠なエクセルの活用術を解説。
即戦力となる経理担当者に必要なスキルが、この1冊で身につきます。